ホテルに帰ると、劉さんが出てきて、荷物はいいからお昼ご飯を済ませてくるようにと言ってくれる。
12:00のチェックアウトに遅れることが判明した段階で、呉さんがホテルに電話して荷物を部屋から出してフロントで預かってくれるように手配してくれていたのだ。

雨に濡れて寒いので、温かいものを中心にした昼食を済ませ、売店で廬山の写真集等のお土産を買い、ジャスト13:30、南昌の空港に向かって出発である。廬山に別れを惜しみつつ、少しでも景色を目に焼き付けておこうと外を見ながら、これからルンルン2時間ドライブである。

が、甘かった。途中で警官がこの先はダメだと言う。後で教えてもらったのだが、大雨で岩が落ちてきて道路が封鎖されてしまっていたのだ。廬山から出るには九江から繋がっている北門か南昌に通じる南門しかないのであるが、まさに南昌に通じる南門への道が封鎖されてしまっていたのだ。仕方なく北門から出ることにする。しかし、北門から出るとなると、ぐるっと回ることになるので時間がかかり、急がないと間に合わなくなってしまう。呉さんは一言急ぐ旨私達に断ると、スピードを上げ、地元の人がやるように対向車線に出て追い越しをするようになった。断るところが紳士よね〜v それに追い越しに無駄が無い。昨日同じような運転をされた時は怖かったのに今回は感動さえ覚える(笑)。

それにしても、スタート地点の廬山賓館にもまだ戻れない。ようやく廬山賓館を過ぎ、下り坂のカーブの山道でさんざん追い越しをかけ、来る時に通ってきた見覚えのある看板を過ぎ、北門までもう少しというところで今度は大渋滞に巻き込まれてしまった。一向に動かない。大雨の中、様子を見に行った呉さんは絶望したような表情で戻ってきた。渋滞はずっと先まで続いているようだ。憶測では交通事故があったらしい。みんながみんなあんなに乱暴な運転をすればさもありなん。15:30までに高速に乗れば何とか間に合うと思うけれど、乗れなければ無理とのこと。今日帰らなきゃダメ?と聞く呉さん。もっと長く滞在したいけれど、明日になっても事態は変わらないかもしれないし、航空券の振り替えができるか、出来たとしても満席だったら乗れないし・・・。とりあえず、南昌まで行ってそれから考えることにする。その間に航空会社に電話をしたりいろいろした。いろいろしたと言っても中国語が出来ない私は何も出来ず、ムサシさんとYちゃんにやってもらったのであるが・・・。無力でごめんなさい。航空会社の方からは、正規航空券なので、フライト時刻前でも後でも変更は出来ると思うが、15:30になったらもう一度電話をくれとのこと。

まさに15:30になった瞬間、いっせいに車が動き出した。高速道路に乗ったのは、15:50。20分遅れだ。ここから暴風雨の中、124キロの道のりの大爆走が始まった。時速120キロ〜140キロ。前の車にパッシングをかけ、次々と抜いていく。私達はただメーターと時々出てくる南昌までの距離を確認するのみ。中国の場合、国内線であればフライトの15分前に空港に着けば何とかなるという話を聞き(中南米の場合は間に合わないことも多いので、私は少し疑っていたが)、とりあえず、17:00に着くことを祈る。

「ダメかなあ。間に合わないかなあ。」とYちゃん。
「ギリギリかもね。でも、希望は捨てない。」、「最後まであきらめないのが私達のモットーだから。」、「信じれば通じるよ。きっと。」、「あと1時間しかない。じゃなくて、まだ1時間あると考えようよ。」(と言っても、距離÷時速であとどのくらい必要なのか分かってしまうのだが・・・。)とムサシさんと私。この焦燥感、星矢達と一緒!?こんな状況下においてもこんなことを言っている、考えている私達って(汗)と、自分で言って自分で呆れる。

前が良く見えないくらいの豪雨。そして強い横風の中、パトカーさえ追い抜いて大爆走。ここの高速道路には制限速度がないのかしら?あったら絶対に間に合わないけれど。呉さんは平気でパトカーを抜いていくが、日本の高速道路のことを考えると捕まらないかその度に冷や冷やである。

1台、2台、3台・・・まるでゲームのように次々に現れる前の車をどんどん追い越して爆走していく。これまで、こんな暴風の中、こんなにスピードを出している車を見れば自殺行為としか思ったことがなかったが、こんな風に訳がある車もあるんだとはじめて認識(笑)。でも、本当に1歩でも間違えれば、大事故になることは間違いない。さすがに保険おりるよね?私は使えないかもしれないけれど。その時は日本の新聞にはなんて書かれるんだろう?やっぱり中国の運転は荒いから。と書かれてしまうんだろうか?そうなると呉さんに申し訳ないなあ・・・。こんなに頑張ってくれている呉さんのためにも何とか時間に無事に到着して欲しい。いろんな思いが脳裏を掠める。

と、「昌北」(空港)の表示が!!間に合うかもしれない!?
高速を下りてもスピードを落とすことなく走り続け、奇跡的に17:00ジャストに空港に滑り込んだ。呉さんへのお礼もそぞろに(でも、最後までにこやかに手を振ってくれた)、空港に走りこむ。既にチェックインカウンターは閉じていて、あちこち駆け回った結果、何とか手続には間に合い、ゲートに駆け込んだ。その間、先を譲ってくれた皆様、どうもありがとうございました。そして、息を切らせながら飛行機に乗り込む。本当に間に合ったんだ。飛行機は、国内線とはいえ、国際規格の広々としたきれいな飛行機だった。そういえば、夢中で駆け抜けてしまったが、チラッと見た南昌の空港はとても綺麗だった気がする。

私達が座席に落ち着いた頃、飛行機は離陸の準備を始めた。中国語の後に英語のインフォメーションが入る。これはすごい!お土産に古き良き時代の日本の国内線のように、わずか2時間のフライトだったにもかかわらず、お土産付き(傘)だし、機内食も出た。つい先程までの大爆走は嘘のように落ち着いた贅沢な時間が流れていく。飛行機から見えた夕日のきれいなこと。そして何事も無かったかのように北京に無事到着。

ちなみに、北京に着いた後、呉さんにお礼の電話を入れてくれたムサシさんの話によると、「当たり前のことをしたまで。」と言われたそう。いやあ、最後までCOOLで素敵なお兄さんでした。そういえば、廬山観光の時にさっと自分の傘をムサシさんに貸してくれるなんてこともあった。廬山賓館の劉さん、そしてドライバーの呉さんに直接お礼を言えないのがとても残念。本当にこの2人のおかげで満足な廬山旅行になったのだから。この場を借りて、ほんとうにどうもありがとうございました。
廬山には、わずか1泊2日の滞在だったけれど、ギュッと濃縮された日々だった。ちょっと嫌な思いをしたり、怖い思いをしたり、いろいろあったけれど、楽しかったな。また行ってみたい。今度は秀峰に行き、滝を見るぞ!

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